砂の中

 

荒れ地に立ち尽くしている塔の上
鳥たちが飛び交い時の流れを告げる
大空に突き刺されていた剣が
抜け落ちて地上に虚しい音を響かせる
錆びついた鐘が赤茶色の涙を流すとき
世界は自らの抗えぬ運命を悟る
吹きやまぬ風と舞い上がる砂の中

 

崩れ落ちた夏の夢の残骸が
晴れ渡る空の下銀色に輝く
かつてこの世を覆った飢えと渇きの季節
多くの人がこらえきれず川に身を投げた
乗り捨てられた車の助手席の上には
女の長い髪の毛が数本落ちている
振り向かぬ風に舞い上がる砂の中

 

荒れ果てた土地から光り輝く緑の海へ
鳥たちは飛び去ってゆく翼を広げ
車や剣、そびえたつ塔までも
舞い上がる砂の中沈んでゆく
そして地上に何もかもがなくなった時
空の上で月と太陽が初めて出会う
そしてその二つはそっと寄り添いながら
地上を見下ろして最後のあいさつをする
“生まれ変わったらまた会おう血に飢えた砂の中”

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